その瞳で見つめて~恋心~【完】
「でもね、今は進藤君のことが好きなの。意外に優しいトコとか、笑顔で接してくれたし……」

あたしは奈月ちゃんの誤解を解くように言う。


ヤキモチやきとか、かわいい一面も見れたり、あたしの頭を優しく撫でてくれたり……。

進藤君の表情や仕種があたしには全部キラキラと輝いていて、いつの間にか楽しくなっていた。


奈月ちゃんはあたしの柔らかい表情を見て、黙ってしまった。


「──まあ、由奈がそう言うなら反対はしないけど。でもアイツ、また遊びはじめたって言うウワサ聞いたよ?」

「進藤君、淋しいんだと思う」

進藤君はただ中学時代のことを引きずって、恋に臆病になっているだけ。

進藤先輩の話を聞いて思い返してみると、ただ淋しさを埋めているだけなのかもしれない。


「だとしても、女の心を踏みにじるなんて」

「確かに、しちゃいけないことだよね……」

なんとか、できないのかな。
あたしにもできること……。


進藤君のことが好きなんだ。

できることがあれば、助けてあげたい。


「話して、みようかな」

「え?」

「進藤君と話してみる。もしかしたら、なんとかできるかも」

「でも……」

「大丈夫。奈月ちゃんが考えてること、あたしにしないと思うし」

奈月ちゃんは不安そうに口ごもる。


鈍感なあたしにでも、彼女は進藤君のことを考えて心配していることはわかった。

でも、彼は無理強いをする人ではない。


そう思って、彼女の考えを振り払うように首を左右に振った。


というか、そう信じたい……。
そうだよね?
進藤君……。
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