その瞳で見つめて~恋心~【完】
「──まだ、俺とじゃ無理か?」

「え……」

驚いた拍子に進藤先輩を見ると、真剣な表情をして見つめられていた。


いきなりキスしたいと言われても、どう反応したらいいか、いまいちわからない。

本来は進藤先輩に残していたはずの初キスだったけど、進藤君にキスしてもらえばよかったと今さら後悔した。


「水嶋……」

声をかけられたときには先輩の顔が急速に近づき、拒むヒマさえなく唇が重なった。


あたしの、ファーストキス──。

進藤先輩と唇を触れ合っているのに、頭は進藤君のことで満たされていた。


進藤君の唇の感触ってどんな感じなんだろう──進藤君だったら、どんなキスしてくれるんだろうと。


息苦しい。

なぜなら、進藤先輩の舌があたしの口の中にあるから。


息の仕方なんて、全然知らない。

あたしはただ、先輩のキスを受け止めることしかできない──。


「兄貴ー? 誰かといんの?」

この声、進藤君……!?
どうしよう、こんなシーン見られちゃう……!


進藤先輩はキスに夢中なのか、弟の声なんか聞こえてないみたいだ。

そればかりか、激しさが増して、あたしを押し倒した。


「兄貴いるの? 入るよ?」

だ、ダメぇええぇ……!
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