その瞳で見つめて~恋心~【完】
そんなあたしの心の叫び声はむなしく聞こえるはずがなく、ドアが開かれた。


ドアの方向を見ると、その視線先にはやっぱり進藤君が立っていた。


どうしよう……。
見られちゃった!


「あ。おかえり」

進藤先輩はやっと弟が帰ってきたのがわかったらしく、唇を離してあたしの上から離れ座り直した。


あたしは顔を合わせづらいので、うつむいた。


「──ごめん。邪魔だったね」

進藤君の冷ややかな声が降り注ぐ。

その冷たい声に反応して、あたしの心臓がドクン──と激しく鳴って胸が痛んだ。


「いや、大丈夫だ。──な、水嶋?」

「あ、はい……」

あんな好きでもない人とのキスシーンを好きな人に見られて、居心地が悪い。

あたしはこの重苦しくて気持ちが悪い部屋から、早く抜け出してしまいたい一心だった。


「俺、水嶋さんと話があるんだけど、いい?」

えっ?
話……?


進藤君からまさか話をしたいと言い出されるなんて思っておらず、我が耳を疑った。


「そうなのか? じゃあ俺、晩ごはんの買い出し行ってくるから、それまで話してろよ」

「うん、ありがとう」

進藤先輩はあたしの頭を撫でてから、買い物に向かった。


「──久しぶりだね、水嶋さんと話すの」

「う、うん」

「ごめんね、せっかくいい雰囲気だったのに」

「あっ、ううん。大丈夫だよ」
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