その瞳で見つめて~恋心~【完】
日が傾き始めたので、オレンジ色に染まる学校──。
部活がないので早く帰ろうとしたら、宿題のプリントを置いてきてしまったことに気づいて戻ってきたんだ。
放課後の学校って、好きだなぁ。
なんだか、幻想的……。
夕陽の光で照らされた廊下に見とれながら、教室に入る。
すると、未だに残っていた生徒があたしの存在に気がつき、こちらに顔を向ける。
「あれ、水嶋さん?」
ドキッ……と心臓が高鳴った。
理由は、あたしの好きな柔らかい声が聞こえてきたから。
「どうしたの?」
「あっ、プリント忘れちゃったから」
「ふーん、そうなんだ」
どんどん心音が大きくなって、体がガチガチに強張る。
そんな中で、あたしは自分の机に近寄り、机の中を探るためにかがむ。
やがて、目的の用紙を見つけることができた。
「進藤君はどうしたの?」
「え? ああ。担任に今まで休んでたバツとして、補習やってけって言われて残されたの」
「うわぁ……。先生もドSだね……」
「はは、確かに。──って言っても、俺も担任と同じだけど」
「確かにね」
進藤君は笑いながら冗談を言うので、あたしは小さく笑った。
あたし、上手く笑えてるかな?
変じゃないかな?