その瞳で見つめて~恋心~【完】
あたしのリクエストに応えているばかりのアトラクションだったので、楽しくて夢中になっていた。
そんな夢のような時間から現在に戻された瞬間は、園内に鳴り響く味が深い鐘の音だった。
観覧車の近くにある大きな広場にあたしと進藤先輩はいて、中心には、そびえ立つ巨大な時計塔が17時を指していた。
そして辺りを見渡せば、夕闇が迫っている夕方になっている。
「結構、由奈って絶叫系好きなんだな?」
「あ、はい。お化け屋敷以外なら大丈夫です」
気持ちが舞い上がっている間はあっという間に時が過ぎ去ってしまうことを噛みしめている最中、進藤先輩に声をかけられて我に返る。
けれども、進藤君のことをまた思い出してしまい、再び感傷に浸る。
進藤君のせいで余計、キライになっちゃった。
でも、あのとき見せてくれた笑顔が忘れられないよ……。
もう忘れてしまったほうがお互いに楽──。
そんなことはとっくにわかっているのに、やっぱり脳内から引き出されてくるのは進藤君のことしかないんだ。
「じゃあ、最後に観覧車でいいか?」
「はい」
「ん」
進藤先輩は観覧車を指差したかと思えば、その腕はぐるりと半回転して、手をあたしに伸ばしてきた。
あたしは、差し伸べる進藤先輩の広げられた手をじーっと凝視する。
えーと、これって……?
「手ぇ、つなぐんだよ」
「あっ! ご、ごめんなさいっ」
そ、そうだったんだっ。