その瞳で見つめて~恋心~【完】
「──水嶋さん」

「えっ?」

まるであたしの心からの呼びかけに答えたようにあたしを呼んだので、まぶたを開いた。


「……っ、すげー顔が真っ赤だよ?」

目を開けたと同時に彼は吹き出して、くすくすと笑い出す。


「ひ、ひどい! ずっと待ってたのに……っ」

「だって……。水嶋さんが可愛すぎるから」

「また、そうやってはぐらかす……」

そして、あたしの速まる心臓をさらにアクセルをかけさせるんだ。


進藤君の相変わらずのからかいに頬を膨らませて、睨んだ。


「進藤君、やっぱり意地悪……」

「今さらでしょ? それに、こんな俺でも好きなんでしょ?」

うっ……、そこを突いちゃうか……。


あたしには返せる言葉もなく、押し黙ってしまう。

惚れた弱みとよく聞くが、まさにこの瞬間のことを呼ぶのかも知れない。


「っ……、やっぱりズルい」

「え?」

「あたし、こんなにドキドキしてるのに」

ふてくされて言うと、進藤君はまた笑った。


「何言ってんの。俺もドキドキしてるよ? 水嶋さんを見つめるだけで、心臓ヤバいもん」

「え?」

「ほら。やっぱり可愛い」

「んっ」

進藤君は不意を突いて、突然に唇を重ね合わせてきた。

心の準備さえもしていなかったので、すぐに体内の酸素がなくなってしまう。


「進藤く……」

「黙って」

呼吸する時間を少しでもいいからほしいとお願いしようとしたが、結局は聞き入られずに唇を強く押しつけられる。

強引なのに、ようやく彼とキスできたことに喜びを感じ、そんな深いキスでさえも甘く優しいものに思えてしまう。
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