その瞳で見つめて~恋心~【完】
「終わったね」
「うん。じゃあ、職員室に届けてくるね」
そう進藤君に報告し、職員室に向かって、プリントを先生に提出した。
「水嶋さん」
「え?」
職員室から退出すると、聞き慣れた声が聞こえてきた。
声が聞こえた先の向かいの壁に、進藤君が寄りかかっている。
「進藤君!? 先に帰ったんじゃなかったの?」
「何言ってんの。彼女を置いて帰るわけがないでしょ」
「あ、ありがとう……」
「ほら。帰ろ?」
「うん」
進藤君の差し出した手を握ると、彼が誘導するように帰ることとなった。
「──進藤君って、あたしのこと、好き?」
校門を抜けると、今まで気にしていたことを彼に尋ねてみた。
すると、その質問を受け止めた進藤君は、面食らった表情をしている。
「何言ってんの、好きに決まってるじゃん」
「じゃあ、なんで?」
「んー。どうしよっかなぁ」
進藤君は首を傾(かし)げたまま、立ち止まる。
「聞きたい?」
「うん!」
「じゃあ……、キスして?」
「えっ?」
唐突(とうとつ)な提案に、うろたえてしまった。
なぜなら、もちろん恥ずかしい要求だからだ。
「タダで教えるわけにはいかないでしょ」
ズルいよ……、それ。
一応、理にかなっているわけなので、言い返せる言葉など見つかるはずもなかった。