その瞳で見つめて~恋心~【完】
「わかった、よ。じゃあ、少ししゃがんで……?」

「うん」

「目も閉じてね?」

「うん」

さすがにキスする様子を見られているところだけは阻止したかったので、指示をする。

すると、進藤君はあたしが促した通りに中腰より高めの姿勢で、まぶたを下ろしてくれた。


しかし、それでも胸の高鳴りは治まることはなく、さらには、彼のことを過剰に意識してしまう。


進藤君って、ホントにキレイな顔してる。
まつげは長いし、鼻は高いし、唇はピンクで──。


「水嶋さん、まだ?」

「まだ……」

早くしなきゃ──。

自分が置かれたこの状況は把握しているつもりだ。

けれども、どうしても羞恥(しゅうち)心が上回り、なかなか彼の唇を触れられない。


「しないと教えないし、もうキスしないかもよ?」

「えっ……!」

それは、やだよ……。
進藤君とキスしたい。
これから……、いっぱいしたいもん。


ようやく決意して、進藤君にキスをした。

瞬く間に離すと、彼は目を開いて微笑を浮かべた顔を向ける。


「ん。よくできました」

と、今度は進藤君が唇を押しつけてきた。

いきなり舌が入ってきてびっくりするが、がんばって受け入れた。


「進藤君のキス、好き……」

徐に離れる口唇が切なく、彼をおぼろげに見つめた。


優しくて、甘い。
それが進藤君のキス……。
好きだから、キスしないなんて言わないで……?
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