その瞳で見つめて~恋心~【完】
「それ、反則」

進藤君はあたしの予期しない発言に、照れを隠しきれずに口元を手で覆った。

彼につられて、こちらも頬が熱くなる。


「だって、進藤君がキスしないってさっき言ったから……」

「あ。あれ? そんなの、嘘だよ」

「えぇっ!?」

嘘だったの!?


『もうキスしない』というセリフを本気にしていたので、嘘だとあっさり認められてしまったら、脱力した。


「だって。じゃなきゃ、キスしてくれなかったでしょ?」

「うっ、そうだけど……。意地悪……」

痛いところを突かれて、相手に送れる言葉はちっぽけなものしか言えなかった。


「それは水嶋さんが可愛いからだよ。──あ。公園で話すよ」

彼は公園を見つけてさっさと入っていくので、その後をついて行く。

そして、入口のすぐそばにある木製のベンチに腰かけた。


「水嶋さんにとっては、ちょっとちっちゃな話なんだけどね」

と、前置きをすると、進藤君は深呼吸した。


「俺、女好きだったじゃん?」

「うん」

「ある日、屋上で女の子とシ終わって、階段を降りようとしたんだ。でも、水嶋さんは多分、屋上に行こうとしてたそのときにぶつかったんだ」

「え? そんなことあったっけ?」

「うん、あったんだよ。んで。ぶつかったときの水嶋さん、どんな感じだったと思う?」

「え?」

「『ご、ごめんなさい!』って顔を真っ赤にして、すごい勢いで階段を駆け下りたんだよ」
< 157 / 192 >

この作品をシェア

pagetop