その瞳で見つめて~恋心~【完】
「……あ」

「あ。水嶋先輩」

昇降口には、たまたま矢野君がいた。


「……今日は、進藤先輩と一緒じゃないんですか?」

「……」

「……そうですか」

矢野君はボソッとつぶやいた。


「一緒に帰りますか?」

「……」

あたしはその問いにも答えないで、進む。


「……なんで、ついて来るの?」

「俺もこっちなんですよ」

しばらく同じ道だけど、ホントなのかな?


矢野君は何、考えてるの……?


 ……進藤君に会いたい。

でも、あんなんじゃ、嫌われちゃったよね……。


「……先輩。やっぱり」

あたしが不安になんなきゃ。


「何かあったんです、か……」

こんなことになんなかったのに……。


さっきのことだったのに、もう進藤君のことが恋しいなんて……。


「……っ」

涙を手で拭く。


だって、矢野君に見られたくない。

見られたくないのに……!


「見ない、でぇ……っ」

「――っ」

そしたら、矢野君がいきなり抱きしめてきた。


「いや……っ」

「俺、なんも見てないです」
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