その瞳で見つめて~恋心~【完】
「え……?」

「なんも、見てないですから」

矢野君の抱きしめる腕の力が強くなる。


 ――矢野君……。


「でも、……ごめんね!」

あたしは矢野君を突き放す。


「あたし……っ、やっぱり、進藤君が好きっ……。大好きなの……!」

止められない。

進藤君への気持ちが。


 ……進藤君が誰とエッチしようなんて、関係なかったんだ。

大事なのは、好きかどうかなんだ……。


「だから……、矢野君とはつき合えないよっ……」

これが、あたしの答えなんだ。


「……そうですか!」

「えっ?」

「待ってたんです。そうやって、はっきり言ってくれることを」

そう言う矢野君の顔は、とびきり明るい笑顔だった。


「進藤先輩に言っといてください。もう大丈夫ですって」

「……うん! ありがとう!」

矢野君に笑顔でお礼を言う。


 ……そして、急いで、進藤君の家に向かった。


「……あーあ。無理だったかぁ。やっぱり、あの2人の仲は止められないな」
< 185 / 192 >

この作品をシェア

pagetop