その瞳で見つめて~恋心~【完】
「は? じゃあ、ついでに送ってけばいいじゃん」

「大丈夫。由奈も了解済みだから。ね?」

「あ……、うん」

突然、同意を求められたので、条件反射で肯いてしまった。


弟の進藤君に加え、その彼女であるあたしさえも留守番をすることに承諾した。

だから、進藤先輩はなんとも表現できない顔をする。


「そっか。じゃあ、行ってこいよ」

進藤先輩の答えに満足するように、進藤君は首を縦に動かして、ホントに買い物に出かけてしまった。


「びっくりしたよ。隼斗が水嶋と付き合いはじめたって言うから」

「そ、そうなんですか」

進藤君の姿が消えると、進藤先輩はあたしの前に腰を下ろしたかと思えば、真っ先にあたしと進藤君が付き合いはじめたことを話題にする。


──なんでだろ。
好きなのは、先輩なのに。
 全然、楽しくない……。


「隼斗が水嶋に告ったんだって?」

「え? あ、はい」

どこか残念に感じてしまっている自分に困惑している中、進藤先輩の声で我に返る。


「珍しいんだよ。隼斗が誰かを好きになったんだなんて。──アイツ、遊びだけしかなかったから」

遊びだけ……。

『女遊びが激しい』と、進藤君自身から告白されたことを思い出した。
< 29 / 192 >

この作品をシェア

pagetop