その瞳で見つめて~恋心~【完】
 放課後──。


「大丈夫か? 水嶋」

倉庫で用具を片付けているとき、出入り口からあの人の声が聞こえてきた。


「あ……、進藤先輩。お疲れさまです」

「ん。1人で片付けてんの?」

「はい。今日はあたしが当番ですから」

片付けは、2年の役目となっている。

これは一年生の間だけの話だから、先輩たちは知らないんだ。


「でも、女の子なんだから、1人でやんの大変だろ? 手伝うよ」

進藤先輩は倉庫に入ってきて、片付けはじめた。


「えっ? だっ、大丈夫ですよ! 先輩は帰っていいですから!」

「いいよ。俺が手伝いてぇだけだから」

「でも……」

「俺が手伝いたかっただけ。もし、バレたら俺がそう言ったことにしていいよ」

進藤先輩は作業を中断しようともせず、あたしを見ようともせずに言い放った。


進藤先輩……。
どうしよう。
今、すごくドキドキしてる……。


彼の優しさに、あたしの心臓が激しく音を立てる。


彼の強引さは上っ面だけで、ホントは優しさの裏返し。


あたしは鈍感だから、最初は気づかなかった。

でも、進藤先輩といて、1年と6ヶ月──もうすぐ2年だ。

それぐらいはわかるようになった。


先輩の優しいところが、大好き。
ちょっと強引だけど、それでも構わない。

 ただ今は……、先輩と長くいたい……。


「水嶋はがんばり屋だから、1人で抱え込むなよ。な? 困ったら、頼っていいんだから」

「はい……」

それって、先輩でもいいってことですか?


言いたかったけど、恥ずかしがり屋なあたしはその言葉をぐっと飲み込んだ。
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