その瞳で見つめて~恋心~【完】
「──すっかり、暗くなっちゃったな」

今の時刻は18時を指していて、おまけに秋だから、日が落ちるのが早い。

危ないからと言って、先輩に送ってもらうことになった。


「あ、あの。先輩」

「ん?」

「も、もう大丈夫ですから。1人で帰れます……」

「ダメ。言っただろ? 危ないからって。それに、知んねぇの? 俺んち、意外と水嶋の家から近いってこと」

え?
そうだっけ……?


ときどき下校する進藤君を見かけることがあるんだけど、彼はあたしと逆方向の道を選んでいた記憶がある。


「とりあえず、送らしてよ。水嶋といると、楽しいんだよな」

「え? ホントですか……?」

「ああ、ホント。俺、嘘つくの下手くそなんだぜ? 隼斗にバレバレだって言われるよ」

「へえ……」

完ぺきに見える先輩にも、欠点があるんだ。

意外な一面を知ったからか、どこかうれしく思ってしまう。


「隼斗さ、いつも俺をうらやましがる。『成績よくていいね』とか、『優しいんだ』とか言う。でも、俺は隼斗がうらやましいんだ……。好きなことができて、明るくてさ……」

先輩は星が瞬(またた)く、キレイな空を見上げながら、つぶやくようにして静かに言う。


そっか。
先輩もうらやましいんだ……。
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