その瞳で見つめて~恋心~【完】
あたしは進藤君の後を追うために、思い切って入った。


「あっ。やっぱり来たんだね」

進藤君はあたしが入ってすぐの場所で、懐中電灯を手にして待っていた。


「やっぱり、水嶋さんは単純明快でおもしろいね」

「う……。それって悪く言えば、単純バカって言ってるよね」

「考えすぎだよー」

進藤君は暗闇だからって油断しているけど、明らかに声のトーンはいつもより高くて楽しげだ。


「ほらほら。行くよ?」

「あっ、待って……!」

進藤君のすぐ背後にぴったりと密着して、離れないようにする。


恐怖でいたたまれないあたしは、辺りをキョロキョロと首を動かして見回すけど、もちろん何も見えない。


入ったばっかりだけど、もうダメ……。


まだお化けやなんらかの仕掛けさえも出てきていないのに、怖くてすくみ上がる。

限界が近いので、進藤君の腕にしがみついた。


「し、進藤君……っ」

「あのねぇ、水嶋さん。そんなに締めつけないでくれる?」

「だ、だって……っ」

「じゃあ、せめて服の裾(すそ)にして? それだったら、痛くないから」

「うん……」

おずおずと腕から離れて、進藤君の服の裾に握った。


で、でも、怖い……!


「大丈夫。俺がいるから」

進藤君は優しく言って、手を重ねてくる。

そんな些細な行動なのに、すごく安心できた。


「あと、くっついてていい……?」

「はいはい。どうぞ」

それでも怖いあたしは、何も視界に入れないようにと目をつむって、進藤君に導いてもらうことにした。
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