白雪姫
「和哉、本当に出ていくのか?」
夕食の席で父親が僕に問い掛ける。そして母親は心配そうに僕と父親の顔を交互に見つめていた。
「春から社会人になるし、自立したいんだ」
僕はお決まりのセリフを言った。
「そうだな。和哉も社会人だ。いつまでも実家にいるのもおかしいな」
父は納得した顔をして僕の成長を喜んだ。
僕の言葉を聞いて夏実はぽつんとつぶやいた。
「おにいちゃんがいなくなるなんて、私、淋しい......」
夏実の髪は金色に近い茶色に染められておりヒロシと一緒にテニスにでも行ったのだろうか、肌は日に焼けていた。僕の白雪姫はもうここにはいない。
僕の愛した白雪姫はマボロシのように消えてしまった。
僕の淡い期待と供に......
残ったものはズタズタに切り裂かれた僕の心臓。
期待した僕が悪いのか、夏実をもてあそんだヒロシが悪いのか、それとも、夏実の美しさが、汚れの無い美しさが悪いのか、僕にはわからなかった。
だけど僕は心のどこかで夏実をまだ愛していた。
無邪気で美しく、そして残酷な白雪姫を殺したいほど愛していた。
僕は引っ越しの準備をしながら夏実との思い出を処分していった。
夏実が大学入学祝いにくれた定期入れ、誕生日にくれた腕時計、バレンタインにくれたチェックのハンカチ。夏実がくれたものを全て段ボールに入れて封印した。
もっと早くこうしておけばよかった。もっと早く夏実と離れておけば、こんな風に淡い期待を持つ事も無かったし、夏実を憎いと思う事も無かっただろう。
僕はいつのまにか声を出して笑っていた。
思い切り、思い切り声を出して、高らかに、笑っていた.....
そして、夏実のお気に入りの手鏡を壁にぶつけて割った。鏡は粉々に砕け散り、欠片はキラキラ光りながら床へ落ちた。
小人でも王子さまでもない。
僕は魔女になりそうだった。
白雪姫に毒林檎を食べさせた魔女に......
気が......狂いそうだった......
夕食の席で父親が僕に問い掛ける。そして母親は心配そうに僕と父親の顔を交互に見つめていた。
「春から社会人になるし、自立したいんだ」
僕はお決まりのセリフを言った。
「そうだな。和哉も社会人だ。いつまでも実家にいるのもおかしいな」
父は納得した顔をして僕の成長を喜んだ。
僕の言葉を聞いて夏実はぽつんとつぶやいた。
「おにいちゃんがいなくなるなんて、私、淋しい......」
夏実の髪は金色に近い茶色に染められておりヒロシと一緒にテニスにでも行ったのだろうか、肌は日に焼けていた。僕の白雪姫はもうここにはいない。
僕の愛した白雪姫はマボロシのように消えてしまった。
僕の淡い期待と供に......
残ったものはズタズタに切り裂かれた僕の心臓。
期待した僕が悪いのか、夏実をもてあそんだヒロシが悪いのか、それとも、夏実の美しさが、汚れの無い美しさが悪いのか、僕にはわからなかった。
だけど僕は心のどこかで夏実をまだ愛していた。
無邪気で美しく、そして残酷な白雪姫を殺したいほど愛していた。
僕は引っ越しの準備をしながら夏実との思い出を処分していった。
夏実が大学入学祝いにくれた定期入れ、誕生日にくれた腕時計、バレンタインにくれたチェックのハンカチ。夏実がくれたものを全て段ボールに入れて封印した。
もっと早くこうしておけばよかった。もっと早く夏実と離れておけば、こんな風に淡い期待を持つ事も無かったし、夏実を憎いと思う事も無かっただろう。
僕はいつのまにか声を出して笑っていた。
思い切り、思い切り声を出して、高らかに、笑っていた.....
そして、夏実のお気に入りの手鏡を壁にぶつけて割った。鏡は粉々に砕け散り、欠片はキラキラ光りながら床へ落ちた。
小人でも王子さまでもない。
僕は魔女になりそうだった。
白雪姫に毒林檎を食べさせた魔女に......
気が......狂いそうだった......