5年前のあの日
坂本亜矢。
俺の幼馴染み。
中学生になると同時に、彼女は東京に引っ越してしまい、それからは親同士が年賀状のやりとりをするぐらいの間柄だった。
亜矢は、とにかく男勝りだった。
男みたいなショートカットに、TシャツとGパン。背も高かったし、俺はいつも本気で殴られた。
でも、ブラウン管の中で泣いている亜矢は、当時の面影を残しながらも大幅な(詐欺に近い)キャラ変更に成功していた。
髪にはパーマがかかり、まつ毛も人形のように長く、これでもかと言うぐらい沢山フリルが付けられたミニスカートの衣装を着て、マイクを握り締め、声を震わせ泣いている。
あいつがアイドルになるなんて、ありえない。
何があったんだ?
つーか、おそるべし、東京……
「あら、大輔、知らなかったの?」
母ちゃんが、山盛りにご飯をよそう。
今日の夕食は、俺の大好きなトンカツだ。
でも、俺は、トンカツよりも、母ちゃんの話の方が気になった。
「え?何が?」
「亜矢ちゃん。去年入ったのよ。BKBに」
「へ?」
「研修生だったから、あまり目立たなかったみたいなんだけど、熱狂的なファンがついたみたいで、今回の総選挙で一気に順位が上がったって。亜矢ちゃんのお母さんもすごく喜んでたわよ。でも、東京ってすごいわね」
母ちゃんは、そう言いながら、味噌汁をよそう。
俺は、大好きなトンカツの味もよくわからないぐらい、上の空だった。
チャイムの音が響く。
俺は、ノートやら筆箱やらを一気にカバンに詰め込み、教室を飛び出した。やばい、今日もギリギリだ。校門をダッシュで出た瞬間、俺は思いっきり腕をつかまれた。
「うわぁっ」
びっくりして振り返る。
「……」
声が出ない。
俺は、金魚みたいに口をぱくぱくさせて、目の前に現れた人を凝視した。
「あや?」
俺の腕を掴んだのは、亜矢だった。
サングラスをかけた亜矢が満面の笑みで俺を見つめる。
「大ちゃん、ヒサシブリ!」
俺の頭はクラクラした。
俺の幼馴染み。
中学生になると同時に、彼女は東京に引っ越してしまい、それからは親同士が年賀状のやりとりをするぐらいの間柄だった。
亜矢は、とにかく男勝りだった。
男みたいなショートカットに、TシャツとGパン。背も高かったし、俺はいつも本気で殴られた。
でも、ブラウン管の中で泣いている亜矢は、当時の面影を残しながらも大幅な(詐欺に近い)キャラ変更に成功していた。
髪にはパーマがかかり、まつ毛も人形のように長く、これでもかと言うぐらい沢山フリルが付けられたミニスカートの衣装を着て、マイクを握り締め、声を震わせ泣いている。
あいつがアイドルになるなんて、ありえない。
何があったんだ?
つーか、おそるべし、東京……
「あら、大輔、知らなかったの?」
母ちゃんが、山盛りにご飯をよそう。
今日の夕食は、俺の大好きなトンカツだ。
でも、俺は、トンカツよりも、母ちゃんの話の方が気になった。
「え?何が?」
「亜矢ちゃん。去年入ったのよ。BKBに」
「へ?」
「研修生だったから、あまり目立たなかったみたいなんだけど、熱狂的なファンがついたみたいで、今回の総選挙で一気に順位が上がったって。亜矢ちゃんのお母さんもすごく喜んでたわよ。でも、東京ってすごいわね」
母ちゃんは、そう言いながら、味噌汁をよそう。
俺は、大好きなトンカツの味もよくわからないぐらい、上の空だった。
チャイムの音が響く。
俺は、ノートやら筆箱やらを一気にカバンに詰め込み、教室を飛び出した。やばい、今日もギリギリだ。校門をダッシュで出た瞬間、俺は思いっきり腕をつかまれた。
「うわぁっ」
びっくりして振り返る。
「……」
声が出ない。
俺は、金魚みたいに口をぱくぱくさせて、目の前に現れた人を凝視した。
「あや?」
俺の腕を掴んだのは、亜矢だった。
サングラスをかけた亜矢が満面の笑みで俺を見つめる。
「大ちゃん、ヒサシブリ!」
俺の頭はクラクラした。