刹那音


「ごめ…明後日は行かない」


それだけ言うのが精一杯だった。


「え、なんで?」


翠の顔からするすると笑顔が消える。


「クラス会やるから」

…適当な嘘をついてしまった。


もうだめだ。

このままじゃ本当に。


翠を傷つけてしまう。


そうなる前に。

…逃げたい。


「じゃあ、またね」


「あっ…律!ちょっと!」


走った。

走って走って走って走って。


そしたら涙も乾くよ。

きっと。


ねぇ、ほら。

俺は弱虫のままだった。



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