刹那音



「ん?」


「あの…希衣でいいよっ!」


「えっ」




まただ。

鼓動が急に速くなる。


胸が締め付けられるような、でもどこか心地好いような。



「あ…嫌だったらそのままで…」




「嫌じゃないよ」


あれ、なんで。

こんなハッキリ答えてるんだろう俺は。


「…ほんと?」


俺の声を聞いて、不安気な表情が緩んだ。

俺がなかなか答えなかったら、心配させちゃったみたい。


「…希衣…って呼ぶね」


…照れる。

女子は基本的に苗字で呼ぶから。

名前で呼ぶのは、近所で幼なじみ(腐れ縁)の川嶋梓ぐらいだ。



でもなんか、希衣には抵抗を感じない。

むしろその方が自然に感じる。



「…私も、律って呼んでいい?」


俺を律と呼ぶ女子も、これもまた梓だけだ。


…何でだろ。

律って呼んでもらえることが嬉しい。


「…うん、ありがと」


今日は顔が日照ってばかりだ。
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