刹那音


「それじゃあ、また明日!」


「…ん、また明日」



希衣が手をふって、マンションの階段を上ろうとした。



もう一度振り返った希衣。



「律っ、ばいばい!」


――きれいな笑顔だと思った。



「…ばいばい」


自然と俺も笑う。




辺りはすっかり暗くなっていた。



俺の熱を帯びた頬は冷めない。


夕焼けのせいじゃない。



…赤いままだ。
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