刹那音
『どういうことだか、分かるだろう』
神様が、また言った。
「どういうことって」
俺は混乱していて状況がつかめない。
『涙を流したとき、依頼主はその世界から消滅し、元の世界へ戻される。』
「じゃあなんで希衣は消えたの?現実に戻ったの? 俺はまだ泣いてな…」
『お前、馬鹿か。勉強ができるのと頭がいいのはワケが違うぞ』
はっきり説明しない神様。
俺はだんだんイライラしてきた。
「…何が言いたいの」
…思わず不機嫌になったとき。
『依頼主が自分しかいないと思うな』
――――――えっ。
また、時間がとまったような感覚。
「それって、」
窓から吹き込んだ風が俺の髪をゆらした。
…もう神様の声はしなかった。