刹那音
桜
律は迷っていた。
手にしているのは自分の黒色のケータイと、希衣の家の電話番号が書かれたメモ。
千尋が今日、俺に渡してきた。
『え、何で俺が?』
『だってお前が野々宮に風邪ひかせたんだろうが』
『…まあ、そうとも言えるけど』
『じゃあよろしく☆』
『でも俺クラス違』
『そんじゃっ!俺は部活に行くかぁー♪』
…俺もお前とおんなじ、部活に行くんだが。
そして何故か楽しそうな千尋。
………でも。
『お前が野々宮に風邪ひかせた』
………これは事実。
だってあんな話し込んでないで早く家に帰るべきだった。
タオルも…貸すべきだった。
さっきからケータイに番号を打っては消しての繰り返し。
通話ボタンを押すかどうかで悩んでいた。