刹那音
鳥居をくぐり、賽銭箱の横にある段差に座った。
スポーツバッグからタオルを取り出して頭を拭く。
…その時。
パシャパシャと誰かが走って来る足音がした。
ちらりと見てみると、髪の長い少女が自分のカバンを頭に乗せて走っていた。
そして俺と同じように鳥居をくぐると、俺と反対側の賽銭箱の横の段差にカバンを置いた。
…どうやら、俺の存在には気づいていないみたい。
ポケットからハンカチを取り出して、自分より先に教科書の入ったカバンを拭いている。
俺は彼女を知っていた。
隣のクラスの、野々宮希衣。
確か吹部の…。
彼女は小さくため息をついたように見えた。
カバンを拭き終わると立ち上がり、小さな手の平に白い息を吹きかける。