刹那音
寒いのだろうか。
律は昔から苦手だった。
異性と話すのが。
別に女子が嫌いなわけじゃないけど。
だから自分から、知り合いでもなんでもないこの人に話しかけるのは、かなり抵抗がある。
…でも。
今にも泣き出しそうなくらい、不安そうな瞳で灰色の空を見上げる君を見て。
なんかほっとけなくて。
気づいたら自然と口を開いていた。
「…風邪、ひいちゃうから」
…そう言って。
俺は自分が持っていたまだ使ってないタオルを、
野々宮さんに差し出していた。