刹那音


――その日、1日中希衣の事しか考えられなくて。


気づいたら夕方。




…明日は大会だ。


早く帰ってジョグと体操して、最終調整しよう。


でも…何か、希衣に会ってから帰りたいな。

なんでだろう。




「――っきゃ!!」


ドサッ

相手が持っていたカバンが落ちて、教科書が散らばった。


――しまった。

ぼーっとしてたから、誰かにぶつかってしまった。


「すっ、すみません!!」


その人は慌てて俺に謝って、自分の教科書を拾いはじめた。



「俺こそごめん…手伝うよ」


そう言って教科書を拾おうと目線を落とした。
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