刹那音




『…麻倉第二、奥原律くん。至急本部前まで来てください』


そんなアナウンス、俺の耳には入らない。


なんだろ。

何かすごいぼーっとする。

夢でも見てるみたい。



「おい、奥原」



バシッ。

いきなり背中を叩かれた。

現実に戻る。


見ると3年の園田紗雪先輩が、整った顔をつりあげ俺を睨んでいた。

――エースに睨まれるとこんなにもぞくっとするんだ。


「え、紗雪先輩」


「え、じゃない。早く表彰式行けっつの!!」


名前の通り真っ白な雪のような肌に太陽の光が反射してまぶしく光っている。

そんな短距離エースがゲシッと俺の背中を蹴る。


「表彰式?」

「さっき800で優勝したでしょ」

「優勝…」

「はぁ?まさか覚えてないとか。ウケるんだけど」



――あ、そっか。

さっきレースが終わったんだった。
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