刹那音
俺はそのペットボトルを頬にあててみる。
するするとその部分だけ熱が冷めていく。
ひんやりとしていた。
それで心地よかった。
ペットボトルも、千尋のさりげない気遣いも。
「おーいそこの二人!!閉会式行くぞーっ」
遠くでゆっきー先輩が叫ぶ声がして、慌てて本部前に走った二人だった。
空は青い。
木々がさわさわと揺れていた。
―数時間後―
「か〜試合後の焼肉はたまんねぇなぁ!!」
「何親父みたいな事言ってんの」
焼肉を食べながら今日の大会の事を話す、麻倉第二中の長距離選手たち。
白い湯気が上がっている焼肉たちは、つぎつぎとみんなの口へ運ばれる。
もくもくとそれらを頬張る集団の中、律はウーロン茶の入ったグラスを見つめていた。
汗をかいたグラスから滴る水滴。
なんか、涙みたいだ。
「えー食べながらでいいから聞いてくれー」
ゆっきー先輩が立ち上がる。
みんな口をもごもごさせながら、視線をゆっきー先輩に向けた。