刹那音


「えー今年の駅伝についてだが―…」


…何か、頭に入らない。


すっごい疲れを感じる。

何だかくらくらする。

ぼーっとする。

食べたくない。

飲みたくない。



焼肉の湯気にむせ返った。

…その時。



「―律くん?」



いきなり名前を呼ばれて、我に返った。


「あの、大丈夫っ?」


同じ中距離の槙野夢架(マキノユメカ)が、心配そうに俺の顔をのぞきこむ。


「え」

「顔、すごい赤い。汗もすごい」


そういえば暑い。

焼肉のせい??


ウーロン茶のグラスを頬にあててみた。

―…今度は冷たすぎた。

離したとき、頬がひりひりした。
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