刹那音


「今日はもう帰ったら?」

槙野が心配そうに言う。

「ん…そうしようかな」


額に手をあててみる。

少し…いや、かなり熱かった。

日に焼けて顔が熱いのかと思ったが、それが原因ではないみたい。


風邪ひいたかな。

あの日の雨のせい?

でも今更か。


じゃあ希衣のでもうつったかな。



…あれ、また希衣のこと。



俺ばかじゃん。


「北見先輩」

「ん?」


ゆっきー先輩の話を遮るのは申し訳ないけど、区切りのよさそうな所で話かけてみた。


「ちょっと熱あるみたいで…今日は帰らせてもらってもいいですか?」

「まじ?風邪?」


ゆっきー先輩が俺の額に触れた。

「うわ、あっつ!!」

ゆっきー先輩の叫び声に部員全員が振り向く。

大袈裟だよ。


「おま…もう今日は帰れ!やばいってまじで!」


そんなにやばいなんて思わなかった。

そして実際そーでもないと思うけど。
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