刹那音


「律、家に誰かいんの?」


「…いないです」


母さんは中学の頃の同窓会、父さんは単身赴任で九州在住、兄さんは学校で勉強中だ。


「何か食わないとだしな…どーせお前料理無理だろ」

「…何で知って」

「いや、見た目的に」


ゆっきー先輩、意外とひどい。

俺は見た目的に料理が作れないらしい。

       
「翠!お前確か料理できるよな?」

突然話題をふられてびっくりしているのは、同じ2年の山下翠。


「まぁ一応ー。俺んちの母さん栄養士なんで」


翠はテキトーで軽い感じだけど、根はしっかりした奴だ。


「よし。律に何か食わせとけ」

「え?律んちで?」

「焼肉の分はあとで埋めるから!!」

「りょーかいしましたー」


…ってわけで。

俺と翠は桜屋を出た。
< 45 / 161 >

この作品をシェア

pagetop