刹那音
「でも、本命は公立だし」
「あの私立で特待合格なら、このまま行けば受かるんじゃね」
「って先生は言ってるけど。どーだろうね」
俺も真っ白い息を吐き出した。
もうすぐ千尋とも別々の道を歩くんだということを日に日に痛感していた。
千尋は俺が公立校の併願で受けた高校を単願で受験し、見事合格通知をもらった。
俺が公立校の受験に落ちれば春からまた一緒だが、それはあまり考えたくなかった。
「あ、あれ野々宮チャンじゃない?」
「えっ」
まだ、反射的に反応してしまう。
希衣に。
もう一年以上立つというのに、気持ちってそう簡単に消えないものみたい。