刹那音


「俺、二人結構いい線いくと思ってたけど」


希衣と俺のことを言っているんだと思う。


「でも違ったじゃん」

「それは、お前が逃げたからだろ?」

「逃げた?」 

「消したでしょ?自分の気持ち。何のためだか知らねーけどさ」


…なんでも分かってるのかな。

千尋。

でもな、ちがうよ。


消せてないよ。

消えないよ。

でも消せたフリするしかないんだよ。


だってもう希衣と翠はつき合ってるんだから。

翠の手紙を希衣に渡したのは俺なんだから。


どうにもならないことだってあるんじゃないの。


ねぇ。

そうだって言ってよ。



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