刹那音
梓は続ける。
「なんか両想いとか噂で聞いたんだけど、その人春から四国行っちゃうから、もう会えなくなるし諦めよっかなって」
両想いってのも、所詮噂だしね。
なんて言って笑って見せた。
なんでこう現実は残酷なんだろう。
離れ離れになるように出来ているんだろう。
「四国って遠いね」
ほかにかける言葉がなかった。
「うん。お母さんが再婚して、新しいお父さんの実家の方に住むんだって」
ますますかける言葉がなくなった。
恋愛話とか、軽率にふっかけるものじゃないんだなと学ぶ。
「ほーら、律まで暗い顔しないの!あはっ」
「いって」
ばしっと俺の背中をたたいた。
励ましてくれているんだろうな。