刹那音
「り…つ、でもこれはもらって?せっかく用意したから」
夢架は制服の袖で涙を拭くと、カバンの中からあのチョコレートを取り出して、おずおずと俺の前へ差し出した。
「……ありがとう」
迷うことなくそれを受け取る。
今日もらったチョコレートの中で、夢架だけ手作りじゃなかったけど、夢架のがいちばん嬉しかった。
「夢架、塾行こっか」
俺たちならまた、少しずつ友達に戻れると思った。
「…行く」
二月。
窓からつめたいすきま風が入る図書室だった。