刹那音
希衣が立っているのは、俺の下駄箱の真ん前。
上から二番目の下駄箱。
……え?
気づいてしまった。
だからさっき、固まったんでしょ?
「…何で…」
チョコレート?
俺の片思いのはずなのに。
希衣の方を振り返った。
隣にいる希衣は、再び俺と目が合うと、即座に別の方を向いた。
「やっぱ用事なかった!翠、帰ろ」
「え…ちょっ、希衣!?」
希衣は強引に翠の腕を引っ張って玄関から去っていった。
…どういうこと?
どうして。
俺の片思いなのに。
見ての通り、翠と希衣はつきあっているのに。
なんで。