刹那音


そのまま学校を出ようとしたとき。


「りーつー!」


後ろから走ってくる足音とともに、誰かが俺を呼ぶ声がして、はっとして涙を学ランの袖で拭く。


ぱっと振り返る。

「……あ」


やめて、来ないで。


「よかったぁ間に合った!卒業おめでと!」

ニカッと笑いかけてくる彼は、寒さで頬が少し赤かった。

…寒いから?


違うかもしれないけど。



「明後日陸部の打ち上げやるけど来るでしょ?」


ああ、来ないで。それ以上何も言わないで。



翠。


今お前と話したら、俺はきっと醜くてひどいことを言ってしまう。


「場所は桜屋でー、桜木先生も来るみたいなんだけど」


…笑え。


「お昼からだから!思い出話でもしようよ。楽しみだなっ!」


………あ、だめだ。


また涙腺が。
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