白いジャージ8~先生と熱い想い~
真相
―真相―
先生と田辺さんが顔を合わすのは二度目だった。
ちょうど田辺さんが家を出ようとしている時に、私と先生が帰宅した。
土曜日で、久しぶりの先生の休日。
両手に買い物袋を下げた先生が、チラっと私に視線を送る。
鍵を閉めようとしていた田辺さんは私達に気付いて、明るい声と笑顔で挨拶をした。
「こんにちは~」
う~ん。
こうして見ると、普通に良い人なんだけど。
「どうも、こんにちは。虫、退治できましたか?」
先生は、田辺さんにそう声をかけた。
田辺さんはちょっとだけびっくりした顔をした後、またにっこりと笑う。
「あ、虫ですか?はい。何とか退治できました。すいません」
「いえいえ。誰でも虫は嫌なもんですから」
私は先生の後ろに隠れて、ヒヤヒヤしながらその声を聞いていた。