白いジャージ8~先生と熱い想い~
「乗せていくことはできるけど、妻の前でそういうことを言うのって、ちょっと理解できないんだよな。確かに俺は君の先生だ。だけど、俺はもう結婚していて、妻がいる。その妻の目の前で馴れ馴れしく“先生”って呼んだり、駅まで乗せてくれと頼んだりするのは、違うと思う」
真っ直ぐな先生の目に吸い込まれそうだった。
ちゃんと気持ちを伝えたい時の先生の目力はすごい。
「あ、そうですよねぇ~。奥さんもやきもちやいちゃいますよね」
田辺さんはそう言って、今日初めて私を見た。
先生は、イラっとした表情でまた何かを言おうとした。
「あ、先生!急いでるんでしょ?もう行って!」
私は先生にそう言った。
先生は、ごめんって顔をして、窓を閉めた。
車が駐車場から出るまで私と田辺さんは車を見つめていた。
気まずいな・・・・・・
駅まで一緒に歩くの、嫌だな・・・・・・
「じゃあ、私は車なんで、失礼するね」
え?
車?
駅まで乗せてって言ったよね。
助手席に座りたかっただけ?
このまま、何もなかったようにこの場を去ることはできなかった。