ささやかなお話
お話
  ある日、ある時、小さな村に旅の親子がやってきて、次の朝、小さな女の子だけが宿泊先の馬小屋に丸くなって眠っていました。
 親たちは女の子を連れて行くだけのお金も気力もありませんでした。
 それで、女の子が目を覚ましたら、独りぽっちでした。

 
 でも、女の子は泣きませんでした。
 どうしてかというと、不憫に思った村人たちが代わる代わるにほどこしを与えたからです。
 女の子は生まれて初めてやさしくされて、気持ちがふわふわとあたたかくなりました。

 女の子は毎日馬小屋で寝起きをしながら、親切にしてくれる村人のために、小さなお手伝いをしました。

 ある時には、赤子の子守であったり、独りぽっちのお年寄りのお話相手であったりいたしました。

 小さなこの子は、必要とされるがうれしさに、どんなことでも引き受けました。 やがて、村人たちは次第に横柄になってしまって、小さなこの子に無理を頼むようになりました。

 それでも、この小さな子は「イヤ」だということが言えませんでした。言えないというよりは、人にあらがう心を持ってはおりませんでした。きちんと言われたことだけをていねいにお手伝いしていれば、いつか「ありがとうね、助かるわ」そういって頭を撫でてくれると信じていたからです。大人からのあたたかなぬくもりと、その日のわずかの食べ物が、小さな子の一日の報酬でした。

< 1 / 3 >

この作品をシェア

pagetop