禁断ノ遊ビ
「薺様、お言葉ですがそれは……」
そんな所に入ってきたその人を僕は何も感じず見ていた。聞いていた。
薺はそんな彼に歩みより、精一杯背伸びして人差し指で相手の唇に触れた。
「それは、ナントカさんが黙っててくれればいいよ」
様子を見ていれば相手が怯えているのが分かった。体は半歩下がり目は見開いているのだ。
「まだ椿は戻る余地、あるでしょ?」
「ですが……」
「黙っててくれないと……殺しちゃうよ?」
クスクスと無邪気に笑い声をあげる。冗談なのか本気なのか計り知れなくて、此方まで無意識に後ずさりをしていた。
「ましてや、雛と椿に何かしようものなら……」
「っ、しません。しませんから……っ!」
「ならよかったっ!」
誰もが薺の前では無力。抑え込もうものなら、体格差が歴然である以上簡単にできる筈だ。
それでもしないのは、薺がそれほどまでに危ない存在だからだ。加減を知らない。殺してしまうのだって構わないそんな存在だからだ。
誰も、勝てやしないのだ。