禁断ノ遊ビ
上がった息と混じって聞こえた狂気的な声に勝手に足が止まった。
構わずに突っ切ればよかったのに、痛いほどに回らない首を無理矢理に回す。
振り返った先には予想通り襖から此方を覗く薺がいた。
前回見た時よりも赤い目は色濃く見え、上がっていた口角は更につり上がっているように見えた。
「父様と母様に言われなかった?走っちゃ駄目って」
流暢な動作で襖を閉め、軋む音こそあるが足音も立てず、右足、左足を交互に此方に近付けてくる。
笑みを向けやってくる。
「く、るな……」
それを言うのが精一杯で、逃げる事が出来ない。もう走ってなどいないのに息は上がりっぱなしで酸素を欲して喘ぐばかり。
きっとこの状態の要因は薺の人間性と、普通じゃない見た目にあるのだと簡単に思う事が出来た。