IMITATION LOVELESS -Remember-
「魑……あの三人、本当に幸せそうだよ…」
谺は三人から離れた場所で木に寄りかかりながら囁いた。
風に遊ばれている髪を押さえながら、空を仰ぐ。
「…あれから四年……私も、三人も元気だよ? ……魑」
《何だよ、谺?》
「え…?」
谺は魑の声が聞こえた気がして振り返る。
しかし 魑どころか誰もいなかった。
「………魑?」
「谺、優夜がお茶を淹れてくれるって」
「今行く~」
谺は 優夜と刹那に手を引かれ、幸せそうに笑う憐に駆け寄って行った。
《おめでと、三人とも…、ありがとう、谺…》
谺が離れた木の枝から真っ黒な梟が音もなく飛び立った。
「優夜、刹那」
「ん? なぁに?」
「ん? なんだ?」
「大好きだよ…?」
「俺も…大好きだよ?」
「当たり前だろ?」
憐の儚い笑顔に優夜と刹那も釣られて笑った。
三人の笑顔は…
どんな宝石より輝き、
どんな物より美しく、
どんな色よりも鮮やかだった。
暗くなり始めた空に、月が輝き始めた。