IMITATION LOVELESS -Remember-


「魑……あの三人、本当に幸せそうだよ…」


谺は三人から離れた場所で木に寄りかかりながら囁いた。

風に遊ばれている髪を押さえながら、空を仰ぐ。


「…あれから四年……私も、三人も元気だよ? ……魑」



《何だよ、谺?》

「え…?」


谺は魑の声が聞こえた気がして振り返る。
しかし 魑どころか誰もいなかった。


「………魑?」


「谺、優夜がお茶を淹れてくれるって」

「今行く~」


谺は 優夜と刹那に手を引かれ、幸せそうに笑う憐に駆け寄って行った。


《おめでと、三人とも…、ありがとう、谺…》


谺が離れた木の枝から真っ黒な梟が音もなく飛び立った。


「優夜、刹那」

「ん? なぁに?」
「ん? なんだ?」


「大好きだよ…?」

「俺も…大好きだよ?」

「当たり前だろ?」


憐の儚い笑顔に優夜と刹那も釣られて笑った。


三人の笑顔は…

どんな宝石より輝き、

どんな物より美しく、

どんな色よりも鮮やかだった。


暗くなり始めた空に、月が輝き始めた。

< 181 / 184 >

この作品をシェア

pagetop