それは舞い散る桜のように

衝突





お母さんは大学病院で臨床検査技師なる仕事をしている。
詳しくは知らないのだけれど、名前の通り、血液検査やら超音波検査やらをやる仕事らしい。

ちなみに今は血液検査が専門らしく、家でよく訳の分からない血液の画像の教科書を広げ、1人かりかりと勉強している。
案外私よりもお母さんのほうが勉強しているんじゃないかなって思ったりもたまにするくらい。


母曰く病院での地位はそれほど高くない仕事らしいが、それでも楽しそうに働いているみたい。


病院勤務といえば、医師か看護師、薬剤師ぐらいしかよく知らない私にとっては分からない世界だけれど。



臨床検査部、と書かれた扉を開ける。

そこからさらに廊下が続き、

その一番奥の検体検査部門の部屋がお母さんの居る部屋。

ガラス張りのドアなのでノックをせずに開ける。

「失礼しまー……す」

母がすぐに私に気付いた。


「あ、さくら。ごめんね、わざわざ」


「ううん。はい、印鑑」


「ありがとう~!」


「今度から気をつけてよー」



そう短く返事を返し、私は部屋を後にした。


さて、これでようやく家に帰りごろごろ……いや、勉強が出来る。


そう思いながら病院の白い廊下を歩いていると、


「大っ嫌い!離してっ!!」






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