それは舞い散る桜のように



「~♪~♪♪」


京都、路面電車嵐電の、鳴滝ー宇多野間の桜のトンネルに差し掛かると、私は自然とその歌を口づさんでいた。

季節は春で、ちょうど桜は満開。
いつもはこの電車を利用しない私も、これが見たさゆえ、友達を巻きぞえにして乗り込んだ。

約200mのこの景色はこの電車からしか見ることの出来ない特別な景色で、誰もがそれに見魅っている。

……そしてそれはいつも、私にこの曲を思い出させた。


「何の曲?さくら」

隣に座る友人が興味津々に訊いてくる。
私は苦笑しながらも、

「さぁて。忘れちゃった」

と短く返すと、えぇ、と彼女は頬を膨らませた。


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