うそつき

その日に公園に行ったら、もう既に演奏会は始まってた。昨日聞いたのとは違う曲を、またちょっと鼻歌まじりに歌ってた。
昨日の曲はすっとんきょうに底抜けに明るかったけど、今日のはちょっとテンポも落ちてバラードみたいになってる。多分ちょっと聞いただけやったら悲しい気持ちになるような曲調やのに、やっぱりなんか優しかった。なんて言うんやろ。悲しい事も全部、この優しい音に包まれたらきっと、幸せな気持ちになれるんちゃうかなぁって思ってしまう。なんや、うちってば詩人みたいやん。音楽の力ってすごいねんなぁってまた思ってたら、ふっと音が消えた。
ちょうど盛り上がってたとこやのに、なんで止めるねんってベンチの方を見たら、こっちに気づいたらみたいでベンチに座りながら手をひらひらさせてた。