うそつき
「あ、智子ちゃん」

いかにも待ってましたって感じで彼はうちの事を呼んだ。

「無理言ってごめんな。ところで、詞の方はどう?ちょっとでも出来てるんやったら、見てみたいんやけど」

すごい期待の眼差しで見られてるのがわかって、全然書けてないなんて言える雰囲気じゃなかった。だから、誤魔化しぎみに

「単語、単語では出てくるんですけど、それがひとつのまとまりにはならなくって。それで、二宮さんに聞きたい事があるんですけど…」

一瞬、彼の顔が強ばった気がしたけど、やっぱりよく見たらにこにこしてたから、うちは話を続けた。
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