うそつき

9

一通り目を通したあと、彼は口を開いた。

「この詞、いいわぁ。ただ、あの曲には合えへんやろうから、また曲作らなあかんな」

予想外の反応やった。

「それにしても、智子ちゃんほんまに才能あるんちゃう?こんなにうまく恋する気持ち書けるなんて。あ、もしかして今ものすごい恋してるとか?」

茶化すみたいにニカって笑って、うちの顔を覗きこんできた。
もう、なんでこうも鈍感なんやろ。ヤケになってうちは半分怒鳴るみたいな口調で

「今、好きな人がいるんです。でも、その人の事しか考えられへんくって。自分で自分の気持ちがコントロールできないんです。だから、嫌われようと思って…。うちが好きな人っていうのは、二宮さんです!この詞も二宮さんの事しか考えられへんくて、だからこんなんしか書けないんです。」
< 76 / 204 >

この作品をシェア

pagetop