う さ ぎ


キンーコンーカンーコン〜。


今日の授業は全て終わりぞろぞろとみんな帰っていっているときだ。

学校にはなるべくいたくない。
単位をとるために来ているだけだ。
あたしは授業が終わったらさっさと帰る。

玄関で靴を履き急いで歩きはじめた。


そのとき、誰かに肩を捕まれた。

「あんた。」

肩をつかんでいる人が言った。

「な…なんですか!?」

あたしはこの学校では地味な子ってことにしてるから、下を向いていた。

「ねぇ。あんた…昨日の…」

「えっ……はっ……?」

昨日のって…。昨日は日曜日で学校がないから…話した人はいないはず。
昨日あのビルから帰ったあと家に電話もなかったし…。


あ!話した人1人だけいる。
飛び降りようとしたらとめたやつだ。

とっさに顔を上げた。


「「あっ……。」」

やっぱり…あの瞳だ。

昨日の男だった。


なんでー!?なんでここにいるんだよ!
この地味な格好さえしてなければ速攻殴るぞ。

でも、あっちは気付かないだろう。
だって昨日のあたしはこんな姿じゃないし。


「あ……ごめん人違いだ。」

その男は肩から手をはなした。


「いえ…。人違い…ですか。それでは私急ぎますので。」


あたしは走ってその場を去った。
なんでいるんだよ。昨日のことは誰かに話されたら嫌だ。
あの男は話すような人ではなそうだけど…。
なんで学校にいるんだ…?
高校生だったんだ…。
何年生なんだろう。


うわー。なんであいつのこと考えてるんだ。もう関わりはないはず。それならもう考える必要もない。どうせあっちからもこんな地味な姿のあたしに話しかけてくるわけがない。さっきのだってただの人違いだ。



そうだ。昨日果たせなかった。
決意したことがはばまれた。
明日またあのビルに行こう。


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