彼ハ知ラナイ【短編・完】
大丈夫だよ、って。
そう答えようとしたとき。
「優衣!よっ!」
無駄に明るい男の声が割り込んできた。
「秋くん、おはよう。」
優衣が少し困ったように返事をした。
あたしは、前を向いて歩き続ける。
「アキでいいって言ってんのに!優衣がそうやって呼ぶとなんか照れるんだよな!」
秋が優衣のことを好きなのは誰が見ても一目瞭然。
中学生みたいに、好きな子の前じゃ緊張しちゃうっていう単純なやつだから。