彼ハ知ラナイ【短編・完】
猫っ毛の髪の毛を触りながら、落ち着かなさそうに優衣の隣を歩く。
いつもは、そこには山本くんがいるんだけど。
今日はいない。
「…皐月も、おはよ?」
「……おはよう。」
「なんか怒ってる?」
「別に?あ、学校着くからあたし先に行くね。」
早足で歩いて離れてしまえば、苦しいことはなにもない。
秋があたしに話しかけたのは、優衣と二人になりたかったからだ。
だったら、あたしは邪魔だから。